toggle
2021-03-26

「ルシール」についての思い出の話

私がまだ女児のころ「ルシール」というおもちゃを所持していた。

タカラトミーの公式ツイッターにると1996年頃に発売されたおもちゃで、いわゆる子ども向けののテプラである。専用のテープカセットとインクカセットをセットして細長いシールを作って遊ぶという趣旨のそれで、名前シールを作ったりビデオテープの背中に貼るシールを作ったりして遊んでいたのだ。

それが誕生日プレゼントだったのかクリスマスプレゼントだったのかまでは覚えていないけれど、多分そういうタイミングで手にしたのだと思う。ひいおばあちゃんにもらったおかきの缶に入れて保管していたことや、サンリオのキャラクターのイラストが入ったテープカセットは無地のものより高くて露骨に巻きがすくなかったなとか、付随する記憶もあるにはある。

とにかく私はルシールを所持しており、そしてまた、当時よく遊んでいた幼馴染の女の子も、ルシールを持っていた。

ルシールはいくつか種類が展開されており、私と彼女が持っていたルシールも、厳密に言えば別機種だった。私のものは操作部分がフラットになっていて、付属のタッチペンで操作するタイプ。幼馴染のものは物理ボタンタイプで、かわいい色の、ゴム製だかシリコン製だかのグミみたいな物理ボタンがついていた。

私の所持していた機種は、文字や登録されている絵文字以外にも、タッチペンで絵が描けてオリジナルの図柄がシールにできる!という売りで、その自由度を考えると、もしかしたら幼馴染のものより後に発売されたものだったのかもしれない。

でも、私のものの方が高性能である(かもしれない)とか、そもそも私が選んで買ってもらったものである、とか、そんなことは一旦おいておいて、私は幼馴染のが持っているバージョンのルシールについた、そのグミみたいな物理ボタンが羨ましかった。

そのボタンと、ボタンを操作する彼女の指先が、とても可愛かったから。

彼女は、多分、今風の言葉で言うと「ブルべ」だったのだと思う。肌の色が白い女の子で、私とは対照的だった。そんな彼女がルシールのボタンを押す指先が、ほんのりとピンク色でとても可愛かったのだ。

どうしたらあんな風になるのだろうと思った私は、誰がどう見ても「イエベ」そのもの。インドア派にも関わらず、学校への往復だけで夏になれば真っ黒に焼けこげていた。そんな私がボタンを押すだけで色づくようなピンク色の指先を持っているわけがなかったし、生まれ持った物だから羨んだってしょうがないということも、その時は分からなかった。

彼女の家の彼女の部屋で、地べたに座り込んでルシールで遊んでいた。名前シールばかりあっても使い道に困ると言うのに、いったいあの時の私たちは何のシールを作っていたのだろう。それは覚えていないのに、その光景だけは鮮明に覚えている。悲しかったり悔しかったり自分の指先の色をひどくコンプレックスに感じたかと言えばそうでもないのだけれど。ただただ「いいなぁ」と思った、それだけなのだけれど。

と、いう記憶が、ゲーム実況グループ”三人称”の顔出しボドゲ動画「今の言葉、なんて聞こえましたか?【ホッタイモイジンナ】」を見ているときにふと蘇った。なぜだろう?あっ、一番右に座っているぺちゃんこさんの、指先がピンク色だったからだ。

おじさんの指先を見て女児の指先を思い出すなんてなぁ。自分でも思ったけれど、やっぱりこの指先は羨ましいよね、と、幼い頃の自分に言ってあげたくもなかったので書いておく。いつだって大抵、隣の芝は青いものだね。