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2022-11-21

ザワクロにまつわる記録

この秋、私は『HiGH&LOW THE WORST X』という映画のおかげで、様々な”はじめて”を経験することになった。

まず、同じ映画を見るために9月に2回、10月に2回、11月に1回、計4回も映画館へ足を運んだ。わざわざ映画館まで行って毎回2,000円弱のお金を払うのだ。サブスクや購入した円盤で何度も見るのとは訳が違う。映画館で同じ映画を複数回見るというのは心理的にハードルが高く、経験はこれまでに一度もなかった。

4回。自分のタイムラインを眺めているとそれは決して多い数字ではない。
同じ映画を10回、20回と見ている人も少なくなかった。それでも、私にとってはじゅうぶん驚異の数字なのだ。

なぜ『HiGH&LOW THE WORST X』を4回も見に行くことになったのか。かなりド直球に端的に言えば、そこに好みの男が居たからである。

そもそも私は2017年頃に一旦『HiGH&LOW』にハマっている。ドラマシリーズを一気に見て、映画も2と3を映画館まで見に行ったのだ。
その時は鬼邪高の村山が好きとか、RUDE BOYSのパルクールがかっこいいとか、達磨一家に推しの若俳が居るとか言って盛り上がっていた気がするのだけれど、如何せん5年も前の事なので細かいことは覚えていない。

しかし、その熱が落ち着いたあとはハイロー自体から離れており、『HiGH&LOW THE WORST X』の前作にあたる『HiGH&LOW THE WORST(2019年公開)』は見に行かなかったし、サブスクでいくらでも見られる機会はあったのに存在すら忘れていた。

というのも『HiGH&LOW THE WORST』は不良マンガである「クローズ」「WORST」(原作・髙橋ヒロシ)とのクロスオーバー作品なのである。不良マンガに触れたことがなく、「クローズ」「WORST」にも確か実写映画があったような……程度の知識しかない私は、「クローズとWORSTを見ないと楽しめないってことなんだろうな。だったら見なくていいか……」と思い込んでしまったのだ。
公開当時ツイッターで、塩野瑛久さん演じる小田島有剣というキャラがヤバイ!!!と話題になっていたことは覚えている。私も写真を見て「こりゃヤバいわ」と思った記憶がある。
(小田島とかこんなん絶対好きだよ〜ていうかオタクは全員好きでしょワハハと思いつつ見に行かなかった自分にできることなら伝えてやりたい。「クローズ」と「WORST」が分かんなくてもマジで全然問題無いぞ)

そして2022年9月公開の『HiGH&LOW THE WORST X』である。
前作を見ていない私が足を運んだ最初のきっかけは、やっぱりツイッターだった。

どうやら新キャラの悪役は幼馴染主従らしい。
しかも従者は主人にいわゆるクソデカ感情を抱いているらしい。

え~!?!?そんなの絶対大好きなんですけど!!!!!

ツイッターの「前作を見ていなくても大丈夫」という言葉を鵜呑みにし、どんな幼馴染主従が見られるのだろうとわくわくしながら映画館へ向かった。
そして、見事に轟洋介というキャラクターに脳を焼かれて帰ってきたのだ。

轟洋介。それは先述の「幼馴染主従」ではない。それどころか彼は2017年の『HiGH&LOW』ドラマシリーズから出続けているキャラクターで、彼のことは以前から知っているはずなのだ。

なんでいま改めて轟洋介!?分からない。でも映画館の大きなスクリーンでドアップの轟を見た瞬間、頭の中が「轟~~~~!!!!!」でいっぱいになってしまったのだ。

もちろん言うまでもなく件の幼馴染主従は素晴らしかったし、2022年の小田島有剣もヤバかった。それでも私の脳を焼いたのは轟洋介というキャラクターだった。

この轟洋介というキャラクターはまず見た目が私の好みすぎるのだ。
黒髪、メガネ、学ラン、インテリっぽい美しい男。この手のキャラクターに私はとことん弱い。
何の変哲もない黒い学ランを着崩さず、中の白いワイシャツにいたってはズボンにインする優等生スタイル。一見地味で周りに埋もれそうなキャラメイクであるけれど、周りのキャラクターが制服を着崩しすぎてほぼ私服にしか見えない中ではかなり異質で、かえって存在感を放つのだ。
そこへ演じる前田公輝さん持ち前のスタイル、整った顔が加わるとどうなるか。まるで二次元キャラのような奇跡のヤンキーが誕生するのだ。

ドラマシリーズを見ていた時の記憶がほとんど無いのだけれど、友だちには「5年前も轟の見た目が好きって言ってた」と証言された。そりゃそうだよ、私が好きにならないわけないんだよこの美しい男をさ!?そうしてぎゃーぎゃー言ってるうちに「それはそうと小田島有剣もやべ~」となってくる。金髪ハーフアップにチェーン付きのサングラス、鎖骨と肩がいつだって丸出しのダルっとした喋り方の男?それはそれで好き~~~~~~。

鑑賞2回目はまさにこの二人のためだった。公開3週目の入場特典がこの二人のクロスカード(なんかよく分かんないサイズのポストカードみたいなやつ)だったのだ。
轟と小田島のクロスカードが欲しいような気がする!いや絶対要らないんだけど、でも…!

休みの日、私は意を決して車に飛び乗った。
ペーパードライバーと言って差し支えないほど運転の経験がない私が!
できることなら自分で運転などせず、全てを公共交通機関で賄いたい私が!
自分の運転では行ったことのない場所へ…!(親の運転では何度も行ったことがある)

自分の運転で映画館へ行く。これも私にとってははじめての経験だった。
私の中で映画館に行くということは、イコールバスや電車を乗り継いで都会まで行くということだと染み付いていた。だからこそ車で30分程度のところに映画館があるという事実をすっかり忘れていたのである。免許をとって何年も経つのに、いまだに自分で車を運転してどこかに行こうという意識が薄いのだ。

2回目の視聴を終えたところで、私はようやく前作の『HiGH&LOW THE WORST』、更にその前日譚である『HiGH&LOW THE WORST EPISODE.O』に手を出した。どんどん遡っていくスタイル。最初から時系列順に見ろという感じではある。
『HiGH&LOW THE WORST』を見て驚いたのは「1回目見た時に”誰……?まぁ前作でなんかあったんやろな……”と思っていたキャラが大体一作目には出ていなかった事」だった。
「せのもん?バラ商??クローズの人???ん???なんですか???」と思っていたのは私だけじゃなかったのか、という驚き。こんなにも「前作を見ていなくても大丈夫」という言葉に嘘偽りがないことがあるのかよ。

そして鑑賞3回目。車で30分のところに映画館があるということと、自分が車を運転できるという事を思い出したせいで映画鑑賞へのハードルがぐっと下がった。
そこへ来て今度は「HELLO! MOVIE」というアプリを上映中に使用すると聞けるという、コメンタリー音声が気になってきたのだ。

イヤホンをつけて映画を鑑賞するというのもはじめての経験だった。
ちなみにこのアプリは上映中でないと利用できない仕組みになっている。どういう事かと思ったら「自動で映画の音声を認識して音声ガイドを再生している」らしい。なんだそれ、ハイテクすぎる。

コメンタリーを聞きながら映画を見るというのは少し難しさがあった。映画の音にかき消されてコメンタリーが聞こえないとか、かといってボリュームを上げ過ぎると静かなシーンで音漏れしていないか心配になったりとか。どうしても目の前の映画の音声に意識がいってしまって、脳のスイッチングも忙しい。ただ、川村壱馬さんと吉野北人さん、三山凌輝さん、前田公輝さんが全員で一度にわっとしゃべっていても、声の聞き分けがしやすかったのは助かった。映画のメイキングを見るのが好きな私としては内容もとても面白かったし、三山凌輝さんの好感度がバツグンに上がった。

前作と前日譚を見たおかげで各キャラへの解像度がさらに高められているのも良かった。3回目にしてようやく泰清一派や中中一派の絆の尊さが沁みてくる。推しキャラ以外のところに目が向くようになってくる。鬼邪高のメンツがプールサイドにたむろっているだけで嬉しい。全日ちゃんはかわいいねぇ。

そして鑑賞4回目。これが今のところ私のラスト鑑賞となっている。
この4回目はちょっと自分でもよく分からない。ただ、最寄の映画館で上映が終わり、職場近くの映画館で上映が終わり、そうやって映画館のスケジュール欄から『HiGH&LOW THE WORST X』の名前が消えていくのを見ていたら、隣県でやっている内にもう一回くらい見ておいた方がいいんじゃないか?と思ったのだ。
しかもこの時はまだ円盤の発売がいつ頃になるのか分かっていなくて、前作の円盤発売が公開終了から約半年後だったと聞いていたのも大きかった。今のうちにできるだけ動く轟洋介を頭に焼き付けておきたかった。

結果として円盤の発売が2023年1月と発表されたので、思っていたよりずっと早く家で見られるのだけど、映画館で見る映画と家で見る映画は別物なので後悔はしていない。
それどころか今、尼崎にある小劇場が12月16日から一週間だけ『HiGH&LOW THE WORST』と『HiGH&LOW THE WORST X』を上映すると知ってかなりソワソワしている。2019年公開の『HiGH&LOW THE WORST』を大きなスクリーンで見られるんですか?ついでに『HiGH&LOW THE WORST X』おかわりいっちゃう???同じ映画を複数回見ることにもう少し躊躇いを覚えた方がいいような気もする。まぁいいか。4回も5回も誤差みてぇなもんだしな。

ところで。私は轟洋介というキャラクターが好きで、きっと前田公輝さんが演じていなければここまで好きになっていなかったとは思うのだけれど、だからといって前田公輝さんが好きかというとそれはまた別の話なのである。
あれから何度かバラエティや情報番組に出演している前田公輝さんを拝見したのだけど、そこでどれだけ笑いを取っていても、可愛くても、かっこよくても、私には全く刺さらなかった。
前田公輝さんが前田公輝さんとして爽やかに笑っていると、轟洋介の面影が遠くて寂しささえ覚える。

元より熱しやすく冷めやすい、公式の供給が無ければすぐに落ち着いてしまうタイプのオタクなので、そうは言っても円盤が出る頃にはこの熱も落ち着いてるだろう。
キャラクターの概念だと騒いで買った俳優とお揃いの香水は日常の香りとなり、ハイペースで書き散らしている二次創作の手も止まる。そしてその内、轟洋介への感情も薄れていく。5年前の記憶がすでに無いように。

今のところ『HiGH&LOWシリーズ』『HiGH&LOW THE WORSTシリーズ』ともに続編については明らかにされていないし、続編が出るのかも分からない。だからこそ私はこの3ヶ月をブログに書いて残しておこうと思った。続編が出れば次はきっと迷わずに劇場へ向かうだろう。そして轟洋介に脳を焼かれる。だからその時は「えっ、〇年前からひとつも変わってなくない!?」とか言って怯えたいと思う。

『HiGH&LOWシリーズ』『HiGH&LOW THE WORSTシリーズ』の続編が待ち遠しい。
前田公輝さんが演じる轟洋介に、また会えますように。