死にたくなったら手芸をしようね

とくにわけもなく気分が塞いでいた。
とはいえ私の場合、「うつ病」みたいな大げさなものではなくて(たぶん)、なんとなくぼんやりうっすらと「死にて~な~」と思うのは子どもの頃からのものなので、自分の性質として、まぁそういうものなんだろうな、と思って付き合っている。

私の「死にて~」は全く能動的なものではない。死にて~と思いながら朝昼晩と三食しっかり食べて、それどころかおやつも食べる。朝起きられなくなることもなく仕事に行って、帰りにはチョコザップに寄って30分ウォーキングする。家に帰ればシャワーを浴びて、毎日7時間はしっかり眠る。自傷もODもしたことがない。どう見ても死にたい人間の暮らしではない。

それでも元気がないのは確かなので、何もしていないと思考はどんどんマイナス方向に転がっていくし、結果的に「死にて~」が加速する。
そういう時は何かで気を紛らわした方がいい。

去年あらためて「メンタルにいいな」と気付いたのが読書。本を読んでいる間は余計な事を考えなくて済む。
あとは映画もいい。ただこれは家で配信を見るのだと没頭しきれないので、映画館に行くのがベスト。(とはいえ、そうなると気軽に気分転換🎶というわけにはいかない)
そしてもう一つが手芸だ。

手芸が趣味になったきっかけを明確に覚えているわけではない。
けれど、今これを書きながらふと、祖父母に買ってもらったアランジアロンゾの『うさぎのちいさいともだち』は、私にとってすごく大きな一冊だったのかもしれない、と思った。
『うさぎのちいさいともだち』は、いわゆる型紙本だ。立体感のない手のひらサイズのフェルトマスコットの作り方が、アランジアロンゾのゆるいイラスト共に15種分掲載されている。
小学生のころ、祖父母の家に泊まりに行くと、必ず車で大きな本屋さんに連れて行ってもらっていた。本屋以外にこれといった娯楽施設の無い田舎だから、他に選択肢がなかっただけなのだけれど、そのころの私は今よりさらに本の虫だったので全く不満を抱かなかった。
祖父母からお小遣いをもらって小一時間ほど本屋に放流してもらうと、青い鳥文庫やコバルト文庫、少女漫画などを買いあさった。
『うさぎのちいさいともだち』は、その本屋さんで出会った一冊だ。入り口のすぐそばの売り場で、表紙が見えるように陳列されていたんだと思う。当時の私はアランジアロンゾを知らなかったけれど、表紙が可愛くてそれだけで欲しくなってしまったのだ。

本を買ったその足でフェルトや刺繍糸などを買ってもらった気がするのだけれど、その辺りの記憶は曖昧だ。
ただ、しろうさぎやくろうさぎ、クマ、わるもの、うそつき……と、手当たり次第に作っていた記憶がある。
小学校卒業のとき、縦割りで面倒を見ていた下級生に手作りの何かをプレゼントする機会があった。周りが牛乳パックに布を貼って作った小物入れを渡しているなか、私はアランジアロンゾのマスコットを作って渡した。あれは今思い返しても、なかなかセンスが良かったんじゃないかと思う。

『うさぎのちいさいともだち』に出会ったのは10歳くらいのとき。
ちょうどそのころ、私は学校で無視されたり陰口を言われたりと軽めのいじめを受けていた。
たぶん私はその頃から手芸を現実逃避の手段にしていたのだろう。
そう考えると、ますますこの本があって良かったと思う。

今も変わらず針と糸を使ってちまちま何かを縫うのが好きで、次は刺繍に手を出したいなぁなんて考えていたのだけれど、最近はめっきり3Dプリンターに夢中だ。
Blenderで作ったものを出力して、それに色を塗ったりデコったり……。手元の作業に集中していると、時間がみるみる溶けていく。

溶けているのは時間だけではない。
デコパーツを買わなきゃ、レジンの着色料を買わなきゃ、レジンは高粘度タイプを買い直さなきゃ……と、お財布の中身も溶けている。でもまあ、これは新しいことに手を出した時の宿命なのでしょうがない。
しばらくはこれで何も考えずに過ごせる。そのことの方が重要なのだ。