あなたの生まれた日によせて
街路樹のモミジバフウが真っ赤に染まっています。ニセモノみたいな終わりの色。乾いたそれを踏みしめる感触と、ぱりぱりと儚く崩れる音が好きです。
東京に木枯らし一号が吹いたと聞きました。日没が早くなりました。寒い夜は不安になるから好きではないけれど、私が唯一見つけられる星座が空に浮かんでいるから、たまに空を見上げたりします。
冬になると、ふとした瞬間に、わけもなく泣きそうになります。
繰り返される暖かそうなシチューのコマーシャルやラジオから流れる冬の曲、クリスマスムード一色で華やかなテーマパークの広告を、どこか遠くに感じます。街にあふれるイルミネーションのきらめきは、綺麗だと感じるから寂しい。部屋に充満する石油ストーブのにおいは、もう何重にも重なっていて、いつの冬を思い出しているのかわからなくなりました。
クリスマスも誕生日も好きでした。冬に悲しい思い出があるわけではありません。なのに、一体、何がフラッシュバックしているというのでしょう。押し寄せる寂しさや切なさは、どこから来たのですか?
寒くなったからナーバスになっているだけだよ。言います。そうですよね。多分、それだけの事なのですが、なんとなく、この切なさが愛おしいような気もします。
ふと、ブドワールの香りを思い出しました。あの甘い香りが、冬の切なさに似ているのかもしれません。
今日はあなたの誕生日ですね。
今年はプレゼントを贈ることができませんでした。昼食をファストフードにしたり、夕食をハンバーグにしたりすることも。
本当は赤い薔薇の花を贈りたかったのですが、なんとなく、やめてしまいました。かすみ草の入っていない、真っ赤な薔薇だけの花束。
お誕生日をお祝いできなかった代わりに……というわけではありませんが、バレンタインデーには、また、チョコレートを贈りますね。人混みは嫌いですが、バレンタインの催事場はかわいいチョコレートがたくさん見られるので、好きです。
今日は昨日よりも気温が高くて、良いお天気でしたね。
あなたが家族に誕生日を祝われる、そんな暖かい「if」を想像しました。
アンリシャルパンティエでいちごのタルトを買いました。お誕生日用のチョコレートもつけてもらって。
滑り込みだけど、あまりにもささやかだけど、今年もお祝いができてよかった。
冬が、始まりますね。