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2017-06-26

聖なる怠け者の冒険(文庫版)

 やったー個性的なキャラクターたちがどたばたしたりしなかったりする森見ワールド全開のやつやー!

 どたばたどたばたごろごろごろごろーって感じで特に感想はありません。めっちゃコミカル。Amazonレビューに「森見初見の人はわけわからないかも」ってあったけど、私は「子どもが読んでも面白いかもなー」と思った。宵山の雰囲気だけ掴んでおけば、主人公は社会人だけど休日の話だし、夜は短し~みたいによく分からない大学の話されるよりはこっちの方が入り込みやすそう。イラストも可愛いよ。

 ところで、所長行きつけの「スマート珈琲店」。どこかで聞いたことあるなと思ったら「きのう何食べた?(よしながふみ著)」だった。

 京都に実在するカフェだからこそ色々な作品に登場するのだけれど、もしも架空のカフェだったらめちゃくちゃ面白いなぁと思った。

 いろんな作家がさも本当にあるお店かのように描写している――もちろん内装やメニューまで同じものが描かれている――のに、現実にはない空想上のお店。人間が創ることのできる並行世界って多分そんな感じ。

 

※以下物語ラストからの引用。未読の方はご注意ください。

 

 切り開かれていく空の向こうに、最初に小和田君が見たものは、小さく金色に輝く三日月だった。やがて広がりゆく裂け目から、長刀と三日月の先に続き真木が現れ、続いて大屋根が現れ、最後には光り輝く駒形提灯が巨大なシャンデリアのように姿を見せた。そして黒い巨大な果実の皮がはじけるようにして、彼らの頭上で夜空がめくれ上がったとき、四条烏丸大交差点を囲むビル街の明かりと、ビルの谷底を輝かせる宵山の光と祇園囃子が、雪崩のように降ってきた。

 というくだりがめちゃくちゃ綺麗で、アニメにしてくれ~と思った。「夜空がめくれ上がったとき」! 美しいなぁ。