君たちはどう生きるか

ジブリにそこまで強い思い入れがあるわけでもないのだけれど、前情報がなくてどんな映画か分からないし見た人も何も語らない、というこの状況に興味をそそられたので映画館に足を運んだ。

まぁでも、ほかに予定がなければ見なかったかもしれない。その日はたまたま午前中に美容室の予約を入れていて、その後は何もすることが無いし、休みの日にわざわざ都会まで出るのだから映画でも見て帰るか～みたいな。じゃあ話題のアレ行っとくか、みたいな。

美容室でカラーとカットが終わり、新しい髪色に大変満足しながらまずは昼食をとれる場所を探す。平日とは言え夏休みの13時過ぎ。どこもかしこも込み合っていて、歩き彷徨ううちに中心から少し離れたOPAのレストラン街へとたどり着いた。

席へ通されオーダーをしてから気付いたのだけれど、隣の四人掛けの席には若い男性が二人、向き合って座っていて、その内一人の声がめちゃくちゃ大きい。話している内容が辺りに筒抜けなのだけれど「みんな大学とか行ってるけど、それって結局肩書が欲しいだけやねん。俺はそういうのあんま興味ないから行かんかったけど」「俺は将来、どうせなら自分で会社やりたいねんな。その方が融通効くやん？人の下で働くとか向いてへんねんな」と、あまりにイキりちらかしていてこちらが恥ずかしくなってしまった。正面に座っている男の子の相槌がほぼ聞こえなかったので、もしかしてその子も「やめてくれ～！」と思っていたのかもしれない。知らんけど。そういうのは居酒屋で冷えた唐揚げを前に22時くらいからやれ！！！！！

行儀は悪いがイヤフォンで耳をふさぎ、何とか彼らの会話をシャットダウンする。食べ終わり店を出ると、「君たちはどう生きるか」の上映時間15分前だった。

そこから映画館へ10分、上映5分前に滑り込むようにしてチケットを発券。こんなに混んでる映画館を見るのは「シン・ゴジラ」以来かもしれない…と思うほどに人がいて、夏休みとジブリのパワーを感じる。ポップコーンやドリンクを購入する時間はなかった。

以下ネタバレを含む感想

見終えたあと「よく分かんなかったな……」と思っていたら、後ろを歩いていた男女二人組の男性が「なんかあんまよく分からへんかった」と呟いた。そうねぇと思っていたら女性の方が拗ねたように「なんでそんな事言うん？」と返したので、赤の他人ながらヒヤリとした。ごめんなさい…。

というか、見ながらずっと思っていたのだけれど、そもそも私って、ジブリがあんまり好きじゃないのかもしれない。

ジブリの中では「魔女の宅急便」と「耳をすませば」が好きだけれど、好きと言ってもどちらも冒頭30分くらいが好きなだけで、なんなら中盤からラストにかけてはあんまりちゃんと見ていないまである。「ゲド戦記」以降の作品はつい最近金曜ロードショーで「コクリコ坂から」を見るまでどれ一つとして見たことが無く、ジブリを映画館で見たのは今回が初めてだった。当然大した思い入れがあるわけもなく、ネットミームとなっているいくつかの台詞に至っては誰がどういうシーンで言っていたものか分からないものすらある。

映画は起承転結がきちんとしたエンタメ作品が好きで、だからこそジブリなら楽しめるかなと思ったのだけれど、ああでもこういう所めちゃくちゃジブリっぽ～いと浅はかな知識で思ったりした。脈絡が無い（ように見える）し説明が無いし文脈が読めない。

例えば空から降ってきた塔（の中身）は何なのか？主人公一家が暮らす家の隣にあるでっかいお屋敷は何なのか？キリコさんはずっとああやって暮らしてきたというような事を言っていたけれど、キリコさんも迷い込んだ一人だったんだよね？その割にはあっちの世界になじみ過ぎてるしキリコさんが居ないとわらわらはどうなるの？ヒミもその能力はなに？そっちの世界に居るとそういうの使えるようになるの？ナツコさんのあの部屋なに？帰りたくなかったのはなんで？

見る側に教養がないからという理由ならまだマシで、監督の頭の中には設定があってパンフやインタビューでは語られているとかになるとお手上げ。考えてもどうしようもない小さい分からんなぁ～が積み重なって最終的に「なんかよく分かんねぇな」という感想になっていく。

あとやっぱお父さんよな。奥さんの妹と再婚するってオワ……ってなっちゃうんだけど、あの時代ならよくあることなのかな。それはそれとして妊娠はもうちょっと後じゃ駄目だったんか？再婚相手にはじめましての日に「すでに妊娠してます」て子どもからしたらめちゃくちゃ複雑じゃないか……？まだトラウマゴリゴリの夢を見とるんですよ眞人さんは！！あとナツコさん、妊娠中だし色々不安定になってるとは言え、すげぇ形相で「あなたなんか大嫌い！」みたいな事叫んでましたけどそれもめちゃくちゃ眞人さんの傷になりそうで怖い。遺恨が残るよぉ……。

打ってて思ったけれど、私がジブリで好きなのって暮らしのシーンなんだと思う。料理したり掃除したりするところ。「君たちはどう生きるか」はしょっぱなから辛くて、ほとんど”穏やかな暮らしのシーン”が無かったように思う。そういうのもあんまり好きじゃない要因の一つかもしれない。

この話題作に乗れない感じ、なんかあったなぁと思い返してみたら「マッドマックス怒りのデスロード」だった。あれもなにがそんなに面白いのか全然わからんかった。分かりたかったな～。