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2016-11-27

落花生

 久しぶりに野ばらちゃんの本を買いました。最後に買ったのが『破産』だったので、もう5年も経つのですね。

 なぜ手に取ったかというと、これが復帰作だから——というわけではなく、ただ、装丁が好みだったからです。カバーがついていなくて(その代わり、大きい帯がついています)、天地と小口が真っ赤に染まっている。黒い明朝体のタイトルと真っ赤な表紙のコントラストが、数え切れないほどの本が並ぶ本屋さんの棚に置いてあってもドキッとして立ち止まってしまうほど、一種の不気味さを醸し出しています。

 私は本を買う/買わないを値段で決めないので、お金がかかって単価が高くなってしまっても、できれば装丁に凝ってほしい。装丁ばかり凝っていて中身がないんじゃ意味がないけど、単行本でしかできないことをしてほしい。

 私が一番好きなのは、乙一さんの『失はれる物語』の装丁です。タイトルの文字が滲んだようになっていて、水滴(あるいは涙)が落ちているようにニスが塗ってあります。文庫版も同じデザインだったと記憶していますが、そちらは印刷のみでの表現になっているので、単行本の方が圧倒的に素敵です。

『落花生』は“私が野ばらちゃんのエッセイに求めているもの”の要素が欠片ほどしか残っていませんでしたが、それは予想していたことなので、あまりがっかりはしませんでした。大好きな『それいぬ』の「春の日には、菜の花畑」をセルフカバーしたようなエッセイがあったのが嬉しかった。

 京都のご家族との会話が、なんだか微笑ましくて好きです。